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夏に“ベストだけ”のスーツ姿はアリかナシか、現役テーラーが語る意外な真実

暑さの絶頂に達す夏の日。

朝の通勤ラッシュから昼の移動まで、体感温度がぐんぐん上がるなか、さすがにジャケットまで着ていられないというのが多くのビジネスパーソンの本音ではないでしょうか。

でも、ワイシャツ一枚ではどうも頼りなく、ラフすぎる印象が拭えない、そんなときに“ちょうどよい”バランスを提供してくれるのが、「ベストだけ」のスーツスタイルです。

ジャケットを省略してもビジネスらしさを損なわず、きちんと感を保ちながらも涼しげに見せるこの着こなしは、近年少しずつ注目されるようになってきました。

では実際のところ、このスタイルがマナー的に問題ないのか、また、どうすれば「だらしない」と見られずに洗練された印象を与えられるのか?

本記事では現役テーラーが、夏におけるベスト単体の着こなしについて、多角的かつ実用的に検討していきます。

【この記事のポイント】

見出し 内容
ベストだけはマナー的にOKか ジャケットを省略した着こなしがビジネスの場でも許容される条件を理解できる
清潔感ある着こなしの条件とは だらしなく見せないためのサイズ感や組み合わせ方のポイントを学べる
適した素材とその選び方 夏でも快適に着られるベストの素材とその特徴を把握できる
着用シーン別のベスト活用術 通勤・商談・リモート会議などシーンごとの使い分け方を知ることができる
現役テーラーの実用的アドバイス プロの視点から見たベスト着こなしの具体的な工夫やコツが得られる

目次

そもそも「ベストだけ」ってどういうこと?

スリーピースの“ベストだけ”着用、ありなのか?

スリーピーススーツとは、ジャケット、ベスト、パンツの3点セットからなるスーツのスタイルを指します

。通常はこれらを同時に着用することで、細部に気を配った細緻な表情を作り出すことができる為、正装として高い位置づけを持っています。

その中で「ベストだけを着用する」とは、このスリーピースの中でジャケットを脱ぎ、ベストとパンツのみを着用するスタイルです。

このような衣装は、特に暑い夏場において、フルスーツの重ね着が体力を消耗させる場面では、とても実用的であり、不要な暑さを避けながら、ほどよいビジネスライクを維持できるとして注目されています。

また、ベストは衣装の中でも体型に合わせやすく、細かなサイズ調整も可能なので、自分らしさを表現する道具としても有用です。

ただし、このようなスタイルを送る場合は、着こなしのセンスと、ドレスコードの規範を確認しておくことも必要です。

ジャケットなし=カジュアル? それともマナー違反?

職場のドレスコードや業種によっては、ジャケットを着用しないことによって、カジュアルな衣装として見られる可能性があります。

これは、フォーマルさやビジネスマナーとしての重みを欠くように見えることもあり、それは特にストレスコードやフォーマルな場では問題視されることもあるため、注意が必要です。

特に金融業、財務系統、戦略員保守的な企業系統などのような細かなマナーが重視される業界では、たとえばベストを着用しているとしても、ジャケットを自由に脱ぐことは本条をいただくこともあるため、手前の理解や許可を得ることが重要になります。

一方、ベンチャー企業やスタートアップ系、あるいはクリエイティブ技術を使う業界においては、規定や外見によりも実用性を優先する場合が多く、ベストのみでも正しく演出されていれば問題ないとされることも多いです。

最終的には、日常的な職場の電話、会話、相談などの実際の行動を評価する経営者や上司の視点によっても、どの程度まで補補可能かが変わります。

夏にスーツベストだけで通勤する人はいるの?

暑さ対策としての「脱ジャケット文化」

近年、日本の猛暑に対応するため、政府や企業を中心に「クールビズ」や「脱ジャケット文化」といった実用的な施策が広がってきております。これは工場はもとよりオフィス等の事務所においても適用され、開放感のある服装コードの定義を見直す動きとなっています。

特に、外活が多く、会社内も暑さがこもりやすい日本の夏においては、どうしてもジャケット着用は耐えがたく、その代替としてベストを活用することで、純粋さを備えながらも涼しげな着こなしを実現する方法として中堀に立ってきました。

ジャケットを脱ぎ、その代わりにベストを着用することは、このような文化の普及とともに「ビジネスカジュアル」として新たな表現の一形として評価されつつあり、ライトな着こなしとフォーマルさを両立させようとする努力が見られます。

脱ジャケット vs. フルスーツの体感温度比較(気温33℃時)

スタイル 体感温度 汗の量(主観)
フルスーツ 約39℃ 多い
ベスト+パンツのみ 約36℃ 中程度
ワイシャツのみ 約34℃ 少ない

周囲からの見え方は?ビジネス的な評価とは

ベストだけの着用は、一部では「きちんと感を保った軽装」として好意的に見られることが多く、クールビズの延長線としても肯定的に受け取られやすい傾向があります。

特に同僚や部下と接する場面においては、清潔感やまとまりのある印象を保てば問題視されることは少ないでしょう。

ただし、上司や顧客といったよりフォーマルな関係性を持つ相手に対しては、その着こなしが「手抜き」と受け取られないよう配慮が必要です。

また、ベストの素材感や色合いが大きく印象を左右します。たとえば、軽やかで涼しげなリネン素材のベストは夏場に適しており、明るすぎない色味を選ぶことで誠実さや落ち着きも演出できます。

逆に光沢感の強すぎるポリエステルや派手な柄物のベストは、カジュアルな印象が強くなり、ビジネスシーンでは不向きな場合もあります。

加えて、シャツとの組み合わせや、パンツとの色合いの統一感もプロフェッショナルな印象を保つうえで重要な要素です。

このように、ベスト単体での着用は「一歩間違えるとだらしなく見えてしまう」リスクもある一方で、適切な選び方とコーディネートを行えば、むしろ“こなれたビジネススタイル”として信頼感を与える可能性もあります。

「スーツベストだけ」はダサいと思われるのか?

「ダサい」と言われがちな着こなしパターン

  • シャツの色や柄が派手すぎると、ベストのきちんと感が損なわれ、全体的にアンバランスな印象を与えます。
  • ベストが体型に合っていない場合、特に肩が浮いたり胴回りが余ったりすると、だらしない印象になります。フィット感は非常に重要です。
  • パンツとベストの色がちぐはぐだと、スーツスタイル本来の統一感や清潔感が失われます。特にビジネスの場では避けたい組み合わせです。
  • ベストがくたびれている、シワが目立つ、毛玉が出ているなど、メンテナンスが行き届いていないアイテムは「無頓着」な印象を与え、印象ダウンにつながります。
  • シャツの襟がベストから飛び出していたり、インナーが透けて見えるような場合も、清潔感が損なわれて「だらしない」と思われがちです。
  • ボタンをすべて留める・留めないなど、基本マナーを守れていない場合も「理解不足」としてマイナス評価になりがちです。

プロが教える“品よく見せる”ベストの選び方

  1. 素材:通気性の良いリネンやコットンブレンドが◎。リネンは軽量で吸湿性にも優れ、特に真夏の外回りが少ないオフィス勤務に最適です。コットンは柔らかく肌触りがよいため、汗をかいても快適な着心地を保てます。ポリエステルとの混紡素材であれば、シワになりにくく、手入れも簡単で実用的です。
  2. フィット感:ウエストに軽く絞りが入り、肩が浮かないものが理想です。肩回りが浮いてしまうとだらしない印象になりますし、ウエスト部分がダボつくと全体のシルエットが崩れます。可能であれば試着して、自分の体型にジャストフィットするものを選ぶと、より洗練された印象になります。サイドアジャスター付きのデザインであれば調整もしやすく便利です。
  3. カラー:ネイビーやチャコールグレーなどの定番色が無難で、どんなシャツやパンツとも合わせやすく汎用性が高いです。ベージュやミディアムグレーなども涼しげな印象を与え、夏に適した選択肢です。また、柄物は控えめなものを選ぶことで、品のある印象を演出できます。

おすすめ素材別・季節対応表

素材 特徴 夏の着用適性
ウール 高級感・保温性あり ✖️(暑い)
コットン 吸湿性が高く柔らかい
リネン 軽くて通気性抜群 ✔️

ベストを着るタイミングと季節感を間違えないために

スーツベストの“ベストシーズン”とは

春〜初夏(4月〜6月)や秋口(9月〜10月)がベストの着用に適しているとされますが、それぞれの季節には特徴があります。

春から初夏にかけては、まだ朝晩の寒暖差が大きく、ジャケットほどの厚さは必要ないものの、シャツ一枚では肌寒さを感じることもあります。

こうした時期にベストを羽織ることで、適度な保温性と見た目の整った印象の両方を得られるため、非常に便利です。

一方、秋口は気温が徐々に下がってくる中で、重ね着の第一歩としてベストを取り入れるのが理想的です。

夏用の軽い素材から、少し厚みのあるウール混紡などへの切り替えを行う時期でもあり、季節の変わり目にふさわしいバランスの良い装いとなります。

さらに、こうした時期はファッション性を楽しむ余裕も生まれやすく、ネクタイやポケットチーフとの色合わせなど、細部のスタイリングを工夫することも可能です。

ベストは単なる機能性アイテムではなく、季節感と着こなしの幅を広げるツールとして活用できるのです。

「真夏でも着ていい」のはどんな日?

  • 室内移動がメインの日(冷房が効いている)では、外気温に影響されにくく、軽装でも快適に過ごせるため、ベストスタイルが適しています。特に大型ビルやショッピングモールなどの冷房設備が整っている場所での勤務であれば、見た目と実用性の両立が可能です。
  • 薄手のリネン素材ベストを着用する日には、通気性が良く湿気もこもりにくいため、真夏日でも比較的快適に過ごせます。さらに、淡い色のリネンベストは見た目も涼しげで清潔感があり、爽やかな印象を与えます。
  • 外回りが少なく、服装の自由度が高い職場の日は、堅苦しいドレスコードに縛られず自分のスタイルを表現しやすいため、ベストだけのスタイルも成立しやすいです。特に自席中心のデスクワークやチーム内ミーティングが中心の日には、動きやすさと快適性を兼ね備えたベストスタイルが活躍します。

ベスト着用判断フロー図

【今日の気温】 → 30℃以上?
     └→ YES → 外回りあり?
               └→ YES → ワイシャツのみにしよう
               └→ NO  → ベスト可(素材に注意)
     └→ NO  → ベスト着用OK!

スリーピーススーツは「失礼」なのか?

格式高い=ビジネスに不向きという誤解

スリーピーススーツは本来、格式を示すスタイルであり、フォーマルな場にふさわしいとされる服装です。しかし、それがビジネスに不向きという考え方は誤解にすぎません。

むしろ、適切なシーンとタイミングで着用すれば、相手に対する敬意や自己管理能力の高さ、さらには品位と信頼感を強く印象づけることができます。

たとえば、重要な商談やプレゼンテーションといった場面では、スリーピースが醸し出す落ち着いた雰囲気や安定感が、ビジネスパーソンとしての自信を後押しする要素になり得ます。

特に注目すべきは「ベスト」の役割です。ジャケットを脱いでも、シャツ一枚ではややカジュアルに見えすぎてしまう場面でも、ベストを羽織ることで“程よくきちんとした印象”を保つことができます。

つまり、ベストはジャケットほど堅苦しくなく、しかしシャツだけよりはきちんとして見えるという中庸的な立ち位置にあり、ビジネスカジュアルの場において非常に重宝されるアイテムなのです。

さらに、ベストはシルエットを整える効果もあり、立ち姿や座った姿勢をスマートに見せる視覚的メリットも大きい点が見逃せません。

あえてスリーピースを“外す”というテクニック

スタイルの一部を崩すことで、堅苦しさを和らげる効果があります。

全体のフォーマルな印象を緩和し、親しみやすさや抜け感を演出できるのは、現代のビジネススタイルにおいて非常に有効なテクニックです。

たとえば、暑い日にはジャケットをあえて脱ぎ、ベストとパンツで軽快な印象を演出することで「分かってる感」や季節感を反映した柔軟な対応力を印象づけることができます。

ベストを取り入れつつ、ネクタイを外す、袖を軽くまくるといったアレンジを加えることで、抜けすぎず、しかしリラックスした雰囲気を保つことが可能です。

ここでは“絶妙なバランス感覚”が求められ、やりすぎるとカジュアルに傾きすぎてしまい、逆にだらしなく見えるリスクもあります。

また、足元も革靴ではなくローファーやスエード素材など、やや柔らかい印象のものを選ぶことで、統一感のある着こなしが完成します。

このような微調整を上手く活かすことができれば、たとえスリーピースを完全に揃えていなくても、「きちんと見えるのに堅すぎない」という理想的なビジネススタイルが実現します。

ベストだけでも「だらしなく見えない」ための3つの条件

サイズ感が命

フィットしないベストは、見た目に清潔感がなく、信頼感を損なう要因になります。

特に肩が浮いていたり、ウエストがダボついていたりすると、サイズが合っていないことが一目で分かり、全体の印象がだらしなく見えてしまいます。

ビジネスシーンでは細部の“だらしなさ”が信頼性や誠実さに直結するため、サイズ感は非常に重要です。

逆に、自分の体にぴったりフィットしたベストは、身体のラインを美しく見せるだけでなく、それだけで姿勢も自然と正され、スマートな印象に導きます。

特にウエストラインが軽く絞られているものや、肩周りが自然にフィットしているベストは、立ち姿・座り姿ともに整って見え、上品さを引き立てます。

オーダーメイドやセミオーダーで自分に合った一着を仕立てるのもひとつの選択肢です。

シャツとパンツの質感で格を上げる

ベストを着る際は、他のアイテムとのバランスが肝心。特にシャツとパンツは、ベストの品格を引き立てるための重要な要素となります。

シャツはパリッとアイロンがけされた白や淡色のものを選ぶことで、清潔感と信頼感を演出できます。

さらに、襟元がしっかりと立ち上がり、袖口にもハリのあるものを選ぶと、よりフォーマルで端正な印象が高まります。

パンツにおいては、ウールや上質なコットンなど、素材感がしっかりしているものを合わせると全体の格が大きく上がります。

特にスラックスは、センタークリース(折り目)がしっかりしているだけでも、脚のラインが引き締まり、スタイル全体がシャープに見えます。

さらに、パンツの丈感や裾の処理(シングルかダブルか)にもこだわることで、足元まで抜かりない印象を与えることができます。

全体として、シンプルながらも素材とディテールにこだわった装いにすることで、ベストの存在感が際立ち、ワンランク上のビジネスカジュアルが完成します。

ベスト単体に耐えうる“素材”とは

夏のベストには、通気性と軽量性を兼ね備えた素材が求められます。

高温多湿な環境に対応するためには、衣服内のムレを軽減しつつも、外見上のきちんと感を保てる素材選びが肝心です。

おすすめはリネンやコットン×ポリエステルの混紡で、特にリネン混は吸湿性が高く、汗をかいてもすぐに乾きやすいため、快適性と清潔感の両立が図れます。

また、見た目にも独特のナチュラルなシワ感が夏らしく、涼しげな印象を与えるため視覚的効果も抜群です。

コットンとポリエステルの混紡素材も優れた選択肢で、肌触りが良く、通気性がありながらもシワになりにくい特性を持ち、長時間の着用でも型崩れしにくいのが魅力です。

オフィスワークや軽い外出程度なら十分に実用性があります。

逆に、厚手のウール素材は高級感がある一方で、見た目にも重厚感が出てしまい、暑苦しい印象を与えるため、夏場の着用には不向きです。ウールベストは秋冬のコーディネートに取っておくのが無難でしょう。

素材と印象の対比表

素材 特徴 夏向き度
リネン 軽量・通気性・ナチュラルな風合い
コットン 柔らかく、自然な見た目
ポリエステル シワになりにくいが、通気性はやや劣る
ウール 高級感はあるが暑苦しい印象を与える ×

「スーツにベスト」は結局いつ着るべきなのか?

季節・場面別ベストの使い分け

  • 春・秋:寒暖差がある季節には、薄手のベストで調整が効く。朝晩は肌寒いが日中は温暖な日が多く、脱ぎ着しやすいベストは実用性も高い。ジャケットを持ち歩く手間も省け、屋内外の温度差にも柔軟に対応できる。特に春先の爽やかな色合いのベストや、秋の落ち着いた色味を取り入れると、季節感も演出できる。
  • :冷房が効いたオフィス、外出少なめの勤務日、移動中の見た目キープに役立つ。リネンやコットン素材を選べば涼しさとドレス感を両立できる。シャツ1枚では軽すぎる印象になる場面でも、ベストを加えることで一段格上の印象になる。出張や短時間の商談などでも有効に使える。
  • :ウール系の厚手ベストで防寒とドレス感を両立。室内でジャケットを脱いだ際の中間着として活躍し、暖かさを保ちつつスーツスタイルを崩さない。特に重ね着を意識したコーディネートが可能で、マフラーやコートとのバランスもとりやすくなる。

シーン別おすすめスタイル表

シーン スタイル提案
社内ミーティング ベスト+シャツ、ノーネクタイで柔らかく
外回り(夏) リネン混ベスト+通気性シャツ
来客・商談 ベスト+ジャケット、ネクタイで整える
デスクワーク中心日 ベスト+ポロシャツ(カジュアルオフィス)

営業・来客対応・移動中、どんなシーンに向く?

営業中は見た目の印象が非常に大切です。第一印象で清潔感や誠実さを伝えることは、商談や契約の成否にまで影響を与えることがあります。

真夏であってもベストを着用することで「きちんと感」を保ちつつ、ジャケットを省略することができるのは大きな利点です。

軽装でありながら、ラフすぎないスタイルは、暑さ対策と礼儀の両立ができる優れた選択肢といえるでしょう。

また、移動が多い日はリュックやショルダーバッグでジャケットを持ち歩くと、シワになってしまったり、荷物のかさばりが気になるものです。

そんな時、ベストならば身軽でありながらも、見た目を整えてくれるため、移動中も好印象をキープしやすくなります。

特に、予定外の訪問先や急なアポイントが発生するような営業スタイルの場合には、こうした“対応力”のある装いが重宝されます。

来客対応の場面では、相手への敬意を示す意味でも、ややフォーマルな印象が求められます。

ジャケットがないと軽すぎると思われる可能性がある一方で、ベストを着用することでワイシャツ1枚よりもワンクッション上の装いとなり、程よい礼儀と親しみやすさを両立させることができます。

加えて、ネクタイやポケットチーフなどのアクセントを加えることで、より丁寧な印象を与えることも可能です。

現役オーダースーツ職人がすすめる“夏ベスト”の活用術

「ベストだけ」が最も活きるシーンとは

  • 展示会やセミナー:立ち姿が多く、写真を撮られる可能性がある場面では、ベストで輪郭をシャープに見せられる。ベストは身体の中心線を引き締める効果があり、スーツ姿での撮影シーンにおいてもプロフェッショナルな印象をキープできる。さらに、動きやすさと軽やかさを備えながらも、来場者やクライアントに対して丁寧な装いとして映るため、プレゼンス向上にもつながる。
  • カフェやオープンスペースでの打合せ:リラックスした雰囲気を保ちつつ、だらしなくならない。周囲のカジュアルな空気感に合わせながらも、ワイシャツ1枚では物足りない場面において、ベストが“調和の取れた軽装”として機能する。少し華やかさを加える目的で、ポケットチーフや時計などのアクセサリーを取り入れても好印象。
  • ウェブ会議:上半身のみ映るオンラインでは、ジャケットを脱いでベストで整えるのが◎。画面越しでも清潔感とビジネス感を演出でき、急なオンラインミーティングにも対応しやすい。また、椅子に座ったままでも型崩れしにくいため、長時間の打合せやセミナー配信でも安定した印象を保てるのが大きな利点。

おしゃれとマナーを両立する仕立てのコツ

  1. 背面の生地にこだわる:化繊の裏地ではなく、前面と同じ素材を使うことで高級感アップ。特にリネンやウール素材を用いたベストでは、背面が滑りやすい裏地ではなく同素材で統一されていると、後ろ姿にも気を配っている印象を与えられます。また、カジュアルな場面でジャケットを脱ぐ時間が長い場合でも、全体の統一感を損なわず、後ろ姿までスタイリッシュに仕上がるのが魅力です。加えて、背面の生地に柄や織り感を少し取り入れると、視覚的アクセントにもなり、ファッション性が高まります。
  2. ボタンの素材や数にも配慮:3つボタン・5つボタンなど自分のスタイルに合った配置を選ぶ。ボタンの数によって印象は大きく変わり、ボタン数が少ないほどカジュアルに、逆に多いとクラシカルでかっちりとした雰囲気になります。さらに、ボタンの素材にもこだわると差がつきます。水牛ボタンやナットボタンなど天然素材のものを選べば、ベスト全体の品格が一段と引き上がります。ボタンの色もベストのトーンに合わせて調整することで、洗練された統一感を演出できます。
  3. 丈感:パンツのウエストが見えない程度で、長すぎないのが理想。丈が短すぎると動いたときにシャツがはみ出してしまい、逆に長すぎると野暮ったい印象になります。理想は、立った状態でベルトがちょうど隠れるくらいの長さ。着丈の前後差やベストのラウンドカット具合も重要で、体型や身長に合わせて微調整することで、バランスの取れたスタイルが完成します。加えて、ベストとパンツの重なりが自然に見えるよう意識することで、横から見た際のラインも美しく保たれます。

まとめ

夏に「ベストだけ」のスタイルを取り入れることは、工夫次第で“涼”と“品格”の両方を成立させる着こなしです。

特に高温多湿な日本の気候においては、ジャケットを無理に着ることなく、ベストで程よいフォーマル感を維持することができる点で非常に理にかなっています。

ベストは単なる軽装ではなく、「見せるレイヤー」として、TPOに応じた正しい素材選びや組み合わせを意識することで、夏の装いを格上げする有効なツールになります。

たとえば、リネン混のベストにコットンシャツを合わせるだけで、軽やかかつ誠実な印象を両立できますし、パンツとの色調バランスを考慮すれば一層洗練された印象に。

さらに、着用するシーンや相手によって小物やネクタイを使い分けることで、ベスト単体でも「きちんと感」と「こなれ感」の絶妙なバランスを演出できます。

素材選びとTPOに合わせた判断で、スマートな印象をキープしながら、機能性も妥協しない選択肢としてぜひ活用しましょう。

 

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